少数民族が織りなす配色とデザインをこよなく愛する織物好き。1990年、グアテマラを訪れた時に、なんだか懐かしいような雰囲気と、先住民マヤの人たちの素直な笑顔に魅かれました。それと同時に、鮮やかな色彩の民族衣装に心を奪われ、以来何度もこの地に通いました。日本へ帰国した後は、決まって多忙な日常。好きで集めたグアテマラの織物は、大切に押し入れに仕舞われていました。
昨今のコロナ禍で、毎年恒例のグアテマラへの旅も一旦中断となり、集めた織布を整理し、ひとつひとつの織との出会いを思い出しながら、素晴らしさを再認識。これを多くの方と共有したいという思いから、2021年に、ARTEORI開設をしました。
世界中、どこの国でも手間のかかる手仕事が失われつつあります。手仕事・手織りの価値とその素晴らしさ、そこに込められた「まごころ」を、布好きな方だけではなく、多くの方にも何かを感じていただければと願っています。
グアテマラを旅していた最中、民族衣装で暮らす先住民の日常の姿を撮影してきました。グアテマラの織をテーマに写真を主軸としたアート作品の創作活動も楽しんでいます。
NAKAMURAの手織りとの出会いは、家の近くで、偶然見つけた織物教室でした。
その後、イタリアで工業デザイナーだったG先生から多綜絖の織りを習いました。そこでは、8枚綜絖の織機を使って、図面を描くところから織るところまでの流れを徹底的に教え込まれ、織りを分類して再現する力を身につけました。
ローマ滞在中にはナバホインディアンの母娘からナバホラグの講習を受ける機会にも恵まれました。ナバホの織物は、初めての民族特有の織物との出会いで、織物には様々な意味や背景があるということを知りました。
この織物の経験から、世界の織物へと興味が広がっていきました。
2010年、グアテマラを訪れる機会がやってきました。空港から村へ向かう車窓から民族衣装の人たちの姿を目にしたとき、「まさか、こんな世界があったなんて!」と衝撃を受けました。村に着くと、村特有の衣装を着た親子が列になって歩き、頭に籠を乗せて沢山の荷物を運ぶ人たちで溢れ、まるで絵巻物の中に入り込んだようでした。とくに、女性たちの多くが、織ったものを身に着けていることに驚きと喜びを感じました。
マヤの先住民たちの女性の織物は、織機を使わず、棒と身体で布を織るといった、これまでNAKAMURAが体験したことのない織り方でした。
「世界中から手織りが消えていく中、ここでは、今でも織り続けている」と、信じられない気持ちと間に合ったと言う気持ちだけで、グアテマラ通いが始まりました。
当初、「あと10年もすれば、織る人もいなくなってしまうだろう」と思いましたが、今でもグアテマラには織る人は多くいます。今後も新しい村を訪ねては新しい織りを習いたいと、織への情熱は変わりません。
今、NAKAMURAは、布の整理や柄の分類など今まで出来なかったことを、遠い村の人たちを思いながらひとつずつまとめています。素晴らしいあの織物が織れるようになるために。